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ITIL 4 × AI × DX × セキュリティ × クラウドが描く「次世代運用」のかたち

クラウドが前提となった現在、IT運用は「止めないこと」だけを目的とする
コストセンターではなく、ビジネスのスピードと品質を支える
価値創出のプラットフォームへと役割が変化しています。

この変化に正面から応えるためのフレームが、ITIL 4です。
そして、AI・DX・セキュリティ・クラウドを「個別テーマ」として扱うのではなく、
ITIL 4を軸に統合して設計し直すことが、これからの運用変革のポイントになります。

ITIL 4が与えてくれる視点:価値共創とエンドツーエンド思考

ITIL 4では、サービス提供を単なるプロセス集合ではなく、
Service Value System(SVS)として捉えます。これは、
「戦略・設計・移行・運用・継続的改善」を一気通貫でつなぐ考え方です。

このSVSの上に、AIやクラウド、セキュリティの取り組みをマッピングしていくことで、
次のような問いが立ち上がります。

  • どの価値ストリームにAIを組み込むと、最も効果的にリードタイムを短縮できるか
  • インシデント管理・問題管理・変更管理のどこにクラウドの標準化が効いてくるか
  • セキュリティ要件を、どのプラクティスに落とし込めば「あと付け」にならないか

これらの問いに答えていくプロセスそのものが、DXにおける
「運用の再設計」と言えます。

AIはどこから組み込むべきか:現実的な3つの入口

AI活用というと、「チャットボット」や「派手なPoC」に目が向きがちですが、
運用領域では、もっと地に足のついた入口があります。

  • ① インシデント・問い合わせの一次振り分け
    過去のナレッジやチケットをAIに学習させ、
    問い合わせ種別の自動分類や、一次回答案の生成に活用する。
  • ② 変更リスクの事前評価
    変更履歴とインシデント履歴を紐付け、
    変更内容に応じたリスクレベルや影響範囲の予測を支援する。
  • ③ 監視アラートのノイズ削減
    類似アラートのグルーピングや、過去パターンからの
    自動エスカレーション条件の提案に活用する。

これらはいずれも、ITIL 4のプラクティス(インシデント管理、変更管理、問題管理など)の
一部をAIで拡張するアプローチであり、大掛かりなシステム刷新なしに始められます。

セキュリティは「あと乗せ」ではなく設計原則として

DXやクラウドの文脈では、スピードが重視されるあまり、
セキュリティが「最後にチェックする項目」として扱われがちです。
しかし本来は、次のような形で設計原則として組み込む必要があります。

  • ゼロトラストの考え方を前提にしたアイデンティティ設計
  • クラウド環境におけるネットワーク分離とガードレールの標準化
  • ログ・監査証跡を「取るだけ」ではなく、AI分析も見据えた設計

ITIL 4においても、情報セキュリティ管理プラクティスや、
リスク管理プラクティスと連動させることで、
「プロジェクト単位でバラバラのセキュリティ」ではなく、
組織横断で再利用できるセキュリティ基盤を実現できます。

クラウド標準化とガバナンス:ガードレールで“自由度”と“統制”を両立する

クラウド活用が進むと、部署ごと・プロジェクトごとに
設計ポリシーがバラバラになりがちです。これを防ぐためには、
「禁止ではなくガードレールで守る」発想が重要です。

  • 推奨アーキテクチャのカタログ化(リファレンスアーキテクチャ)
  • セキュリティ・ネットワーク・監視ログの共通設計
  • アカウント構成やタグ設計などのクラウドガバナンス方針

これらをITIL 4のサービス設計/サービス移行プラクティスと結び付けることで、
「プロジェクトが変わっても、守るべきものは同じ」という状態を作れます。

今日から始められる「次世代運用」への小さな一歩

ここまで挙げてきた内容は、大きな変革テーマに見えるかもしれません。
しかし、スタートはもっと小さくて構いません。

  • 1サービスだけを選び、ITIL 4のプラクティスと現行運用を棚卸ししてみる
  • そのサービスのインシデント管理に、AIを試験的に組み込んでみる
  • クラウドの標準アーキテクチャとセキュリティガードレールを「暫定版」として定義する

大切なのは、「ITIL 4・AI・DX・セキュリティ・クラウド」を別々の施策として捉えるのではなく、
一つのストーリーとして再設計することです。

運用の在り方をアップデートできた組織から、DXの成果は加速していきます。
ぜひ、皆さまの現場でも「次世代運用」に向けた一歩を踏み出してみてください。

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