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AIを導入しても運用が楽にならない理由 ― 本質は「AI前提の運用再設計」にある

AI活用が急速に広がるなかで、さまざまな企業から次のような声を聞く機会が増えています。

  • 「AIチャットボットを導入したのに問い合わせが減らない」
  • 「AIで自動化したはずなのに、現場の手作業が残り続けている」
  • 「運用負荷が下がるどころか、むしろAIの管理が増えた」

これはAIが「機能」として導入され、運用プロセスと結合していないことが主な原因です。
AIの力を最大限に引き出すには、技術導入ではなく
“AIを前提にした運用設計の見直し”が不可欠です。


■ 1. データが整備されていないとAIは正しく動けない

AIの精度を決定づけるのは、入力として与えるデータです。
しかし多くの企業の運用現場では、次のような課題が存在します。

  • インシデントログが自由記述で、分類が統一されていない
  • ナレッジが散在し、検索性が低い
  • 手順書が属人的で、形式がバラバラ

この状態では、AIが正確な判断をくだしたり、最適な回答を生成したりすることが困難です。
AI活用の「前準備」として、データ構造化・ナレッジ整備・分類体系の設計が重要になります。


■ 2. AIの役割定義が曖昧だと“便利ツール”で終わる

AIを導入しただけでは、運用の負荷は下がりません。
重要なのは、AIが“何を代替するのか”を明確に定義することです。

AIが担える役割の例

  • インシデントの一次分類
  • 問い合わせの初期回答生成
  • ログの抽出と要点サマリ
  • 設定変更時の影響領域の推測

役割が明確であれば、現場は「AIに任せるべき部分」と「人が判断すべき部分」を迷うことがなくなり、
結果的に業務効率が大きく向上します。


■ 3. AI導入後に残る“属人化”が最大のボトルネックになる

AIが6〜7割の作業を代替できる環境になっても、残りの3〜4割が属人化したままでは
運用の負荷は劇的には下がりません。

特に次の領域で属人化が残るケースが多いです。

  • 優先度判定(Impact × Urgency)
  • 復旧条件の判断
  • エスカレーションの可否
  • 根本原因分析(問題管理との連携)

これらは、AIが参照できるルールやデータが整っていないことで発生します。
AI活用は、現場の判断基準を標準化・明文化して初めて加速します。


■ 4. 本質は「AI導入」ではなく「運用プロセスの再設計」

AIを導入しても現場が楽にならない企業の多くは、運用プロセスが従来のままです。

従来プロセスにAIを“後付け”してしまうと、次の問題が発生します。

  • AIで対応しても、最終判断は人間に依存
  • AIと手動対応の境界が曖昧で、逆に複雑化
  • AIの提案がプロセスに反映されず、改善が進まない

この状態を脱するためには、
“AI前提でプロセスそのものを再設計する”ことが欠かせません。


■ 5. AI前提の運用モデル ― どのように構築するのか?

● Step 1:データ・ナレッジの構造化

分類、FAQ、手順書、ログ形式を統一する。

● Step 2:AIの役割を明確化

一次回答、分類、ログ分析など、どこを代替させるか定義する。

● Step 3:現場の判断基準のテンプレート化

優先度、復旧条件、エスカレーション基準などを明文化し、AIと人間双方が参照できるようにする。

● Step 4:AIと運用プロセスの結合

インシデント管理、変更管理、問題管理の各プロセスにAIを組み込む。

● Step 5:KPI管理と継続的改善

AI導入後のKPIとして、一次解決率、平均対応時間、再発防止率などを計測する。


■ まとめ:AIの価値は“技術”ではなく“運用の仕組み化”で決まる

AIは運用を変える非常に強力な手段ですが、
その効果は運用フローの設計と標準化に大きく左右されます。

AIを導入したのに負荷が下がらない場合、問題の多くは技術ではなく運用設計です。
AI前提で業務を再設計することで、初めて大きな価値が生まれます。

株式会社FourthWallでは、AIを活用した運用改善、運用標準化、データ・ナレッジ整備、
インシデント/変更管理の再設計などを支援しています。
AI活用を次のフェーズに進めたい企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。

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