BLOG

セキュリティを強化すると業務が遅くなる ― この“永年の矛盾”を解消するためのDXアプローチ

クラウド活用、AI導入、アプリケーション開発の高速化が進むなかで、多くの企業が未だに抱えている課題があります。
それが、「セキュリティを強化すると業務スピードが落ちる」というジレンマです。

承認フローは増え、レビューは複雑化し、設定も細かくなり、結果として現場の負担が増加。
その一方で、経営層は「セキュリティ強化」と「ビジネス推進」を同時に求めるため、IT部門は板挟み状態に陥ります。

しかし、このジレンマは“仕方ないこと”ではありません。
実は、セキュリティとスピードは両立可能であり、その鍵は「運用DX」×「SecOps」のアプローチにあります。


■ 1. なぜセキュリティ強化は業務スピードを遅くするのか?

まず、企業でよく起きている課題を整理してみます。

  • 複雑な承認フロー:誰が承認すべきか分からず、多重フロー化
  • 属人化したレビュー:チェック基準が明文化されず、人によって判断が違う
  • 例外申請の乱発:ルールが現場と乖離し、例外運用が常態化
  • 監査対応の負担増:ログや証跡がバラバラで作成に時間がかかる
  • セキュリティチェックが後工程に集中:最後に大量の指摘が出て手戻りが多い

これらの大半は、セキュリティ自体が悪いのではなく、
「人間が判断することでしか成立しない仕組み」になっていることが原因です。

つまり、問題の本質はセキュリティ設計ではなく運用設計にあります。


■ 2. DX時代のセキュリティ戦略は“仕組みに埋め込む”ことが前提

これまでのセキュリティは「守らせるもの」でした。
しかし、DX・クラウド・AIが当たり前になった今は、「仕組みに埋め込むもの」へと完全に移行しています。

● ポイント①:セキュリティを“人の作業”にしない

暗号化するか?公開するか?権限は最小か?
これらを一つ一つ人が判断していては、ミスも遅延も必ず起きます。

● ポイント②:プロセスに埋め込むことで再現性が生まれる

  • テンプレート化
  • 自動チェック
  • 標準パターン化
  • 逸脱検知

これらが揃うことで、「気をつける」「やり忘れない」といった感覚的な管理から解放されます。

● ポイント③:セキュリティは“現場の負担”ではなく“組織の能力”になる

仕組み化されたセキュリティは、現場のスピードを奪わず、ビジネスの成長を支える基盤となります。


■ 3. セキュリティとスピードは本来“両立”できる ― SecOps × DXという考え方

ここから踏み込んで、セキュリティとスピードを同時に実現するための実践的アプローチを整理します。

① テンプレート化(Infrastructure as Code)

安全な構成を最初からコード化・標準化し、例外を減らす。

② ガードレール設計(Config / Security Hub)

逸脱した設定だけ検知。禁止ではなく“見える化”で現場負担を減らす。

③ 自動化されたセキュリティレビュー(CI/CD統合)

開発やインフラ変更のたびに自動でチェックする仕組み。

④ 権限・ネットワーク・ログの標準パターン化

プロジェクトごとに判断させず、再現性のある構造に統一。

⑤ 証跡の自動収集(監査対応の負担をゼロへ)

監査のために「証跡を作る」のではなく、日常運用から自動で溜まる構造に。

これらはすべて、DX(業務変革)そのものであり、
“セキュリティは足かせ”という時代を終わらせるアプローチです。


■ 4. 具体的にどう進めるべきか?ロードマップを提示

企業で最も効果が出やすいステップをまとめます。

● Step 1:現状の可視化(As-Is)

  • 承認フローの棚卸し
  • 例外運用の洗い出し
  • 属人化領域の特定
  • セキュリティ設定のばらつきの可視化

● Step 2:理想状態の設計(To-Be)

  • 標準化すべき領域の選定
  • テンプレート化とガードレール化の方針決定
  • 自動化できる業務の抽出

● Step 3:仕組みの構築(SecOps×DX)

  • IAM・ネットワーク・ログ・ストレージの標準パターン整備
  • CI/CDにセキュリティチェックを統合
  • Config/SecurityHubによる逸脱検知の仕組み化

● Step 4:ガバナンス強化と運用定着

  • セキュリティ委員会の再設計
  • 例外運用の管理プロセス整備
  • スピード・安全性を同時に測るKPI設計

このステップを踏むことで、セキュリティを強化してもスピードは落ちず、
むしろ“再現性のある高速な業務”へと進化します。


■ 5. まとめ:セキュリティ強化は業務スピードの敵ではない

セキュリティが業務スピードを遅くするのは、セキュリティの強さが原因ではありません。
原因は、人間依存の運用プロセスにあります。

テンプレート化・ガードレール化・自動化・標準化を組み合わせることで、
セキュリティとスピードは確実に両立できます。

株式会社FourthWallでは、セキュリティ設計、運用DX、ガバナンス整備、SecOps構築など、
クラウド・DX時代に求められる“次世代セキュリティ体制”をご支援しています。

セキュリティと業務スピードの両立に課題がある企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP